SOMEDAY

SOMEDAY いつかきっと…
棚沢の獅子舞
7月の終わり、川乗山に登って鳩ノ巣に下山した際、伐採された急斜面を熊野神社に降りる道が分かれていた。
なんとなく、開けた景色と熊野神社という名前に惹かれて、と言うより
一刻も早く集落に下りたいという気持ちが一番強かったのかもしれないが、そちらの道に進んだ。
これが結構急斜面で、散々山を歩いてきた足には応えたが、何とか熊野神社の境内に降り立った。

みると、境内には、ちょっとした広さの庭があり、古い良い感じの舞台がある。
周りには石組みになった階段状の観覧場所のようなものがある感じだ。
うーん、これは…。なんとなく、ビビっと来るものがある。
一昨年の名栗の獅子舞との感動の出逢い以来、ちょっとした獅子舞フリークになっているわたし(笑)
もしかして?っと思って、近くで作業をしていらした方に声をかけた。
すると、8月の第3日曜日に獅子舞があるという。
やった〜!わたしの感は、見事に的中したのだった。
そのおじさんは、優しい笑顔で、『良かったら観にいらっしゃい』と誘ってくださった。
「はい!必ず、観に来させていただきます。」と、約束したのだった。

そして、当日、朝から小雨が降りしきっていたが、きっと、獅子舞は開催されているとの想いで出かけることにした。鳩ノ巣駅に着く頃には、雨も上がってきた。
熊野神社へと向かう踏切には、祭り提灯が下がっていた。何だかワクワクする!

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棚沢の集落は山懐に寄り添うように続いている。
細い路地は坂道になって絡み合うように交差したりしながら伸びてゆく。
やがて坂を登ったその奥に、山を背に熊野神社の鳥居が見えてきた。

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縁日の露店も並んで、何だか時代をタイムスリップしたような懐かしいようないい雰囲気だ。
聞き覚えのある節回しの篠笛の音色が境内から流れてくる。

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小さな境内では獅子たちが舞っていた。

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丹精で、年代を感じさせる渋い光沢のある獅子頭だった。
とても古くから伝わっている獅子舞なのだと思う。

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緩やかな流れるような所作の舞だった。奥武蔵下名栗の獅子舞が動だとしたら、奥多摩棚沢の獅子舞は静だと感じたが、メリハリがあり、盛り上がる場面はなかなか迫力がある。

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見ごたえのある舞いとスマートな獅子の顔に惹かれて吸い込まれるように見入った。

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風抜けの良さそうな舞台の床下が獅子舞役者さんたちの控え室になっている。

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舞い終わった獅子の衣装は物干しに干されて…控え室では人々が談笑している。

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舞台の前の椅子は特等席のようだ。地元のお年寄りが、交代に座ったり、和やかな風景だ。
かつての獅子舞役者さんかしら?かわいいおじいちゃんたちです。

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おじいちゃんが増えました。

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またまた増えました。

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舞い終わった後は

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みんなで記念写真、上気した笑顔はやり遂げた満足感が弾けていた。
とても良い光景だった。

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次の芝が始まる前は、準備に余念が無い。

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出番を待つ獅子やささらたち

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いよいよ出発。一列に舞いながら境内に進む。

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こんなポーズは、かなりきついだろうなぁ

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こんなポーズは、獅子というより、竜を連想させる。
体を捻じ曲げ上半身を退けぞらせて、苦しい体制だ。酸欠になりそうだと思う。

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名栗には無い所作だ。

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雨が落ち始め雲行きも怪しくなる。
こんな中での獅子舞も迫力満点だ。

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こちらのささらは、踊りも踊る

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こんな所作の違いなどを探しながら楽しく観覧する事が出来た。
わたしを含め、数人の人がカメラ片手に見物に訪れていたが、ギャラリーは地域の人だけと言う感じのこじんまりとした獅子舞だった。
そこが、また、味わいがあるように感じた。ゆったりとした時の流れに身を委ねている感じ。
古式豊かな獅子舞を守り続けている人々は、淡々と、そして力いっぱい舞い続ける。
自分たちの祭りを愛し大切に受け継がれて来たのだと思う。

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さて、この辺で棚沢の集落をまわってみることにした。
ヒャクニチソウやサルビアの咲く道

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コボタンズルの白い花がいたるところに咲いていた。

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キバナコスモスが咲く道で

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こんなかわいいワンコに出逢った。ワンコのご主人によると、2匹とももう老犬だという。

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向かいの山で作業をしている人たちの姿に惹かれていってみることにした。

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綺麗な小川に架かる古い木橋を渡っていく。

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小さな堰もある。

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作業の方に頼んで、薬師堂まで登らせていただく、薬師堂では30人近いボランティアの方々がお食事中だった。
途中から熊野神社のほうを見ると、獅子舞が演じられているのが望めた。

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ボランティアの方たちの作業を邪魔しないようにすぐに下山する事にした。
タカサゴユリは清楚な花を付けていた。

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咲き残ったホタルブクロは、雨に濡れて透明に透き通って、ガラス細工のよう…

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こうした野の花を残して、草刈をされている。自然を慈しむ人々に感心してしまう。
もう、秋の花…

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ススキもいくつも咲き始めた。

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雨が激しく降り始めたので、獅子舞の最後の芝が気になったけれど家路に着くことにした。
地元の獅子舞を見れて今日は素晴らしい一日になった。
そして、人知れず山で汗を流す人々との出合いも、わたしに何かを教えてくれたような気がする。

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精霊流し
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夕立の後、清々しく空が晴れていった。
山々の谷から靄が白く湧き上がる。
ほんのりと山際を夕日の色が染めていた。
涼やかな川辺を雨の匂いを含んだ風が流れていく。
もう、ひそやかに草原からリリ…リリ…と、秋の虫の声…
「もう…秋なんだね。」
「夏は、もうじき終わってしまうんだね…」
大好きな夏は、もう、少しづつ往こうとしていた。
送り盆の精霊流しがあることを知って、名栗の里にやってきた。
暮れなずむ山里に、小さな提灯が灯りだす。

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山懐の観音寺から人々が小さな燈籠を抱えて降りてきた。
三々五々、川辺に人々が集まりだした。

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辺りが夕闇に包まれだした頃、小さな桟橋から最初の燈籠が流れ出した。
水面を滑るように…

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ろうそくの火影がゆらゆらと揺れて、蓮の花をかたどった小さな舟は漂い流れる。
次々と、燈籠は、ゆかりの人々の手で水面にそっと放たれ、
静かに流れながら懐かしき御霊は空へと帰ってゆく。

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オレンジの光が水面を染める時、一際美しい日本の風物詩に胸打たれる。

しじまよ…何故に優しい。
光よ…何故に切ない。
水面よ…幾千の時の流れよ、鎮魂の波は揺り篭となる。

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「来年は、燈籠を流してみようかな…」
『うん、おじいちゃんとおばあちゃんの燈籠ね。それもいいね…』

父母の燈籠は、きっと寄り添いながら流れていくに違いない。
その灯りを見つめながら、きっと涙がこぼれるだろうなぁ…

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忘れ得ぬ面影をこうして胸に刻む。
日本の夏は、なんて風流なのだろう…
わたしたちはいつまでもその光を見つめていた。

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    精霊流しが見えますか?
    空の上から…

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ダイアナ
〜Lethe diana レテ・ダイアナ…月の女神って意味なんだ。
素敵な名だろう?

あなたのその言葉で、わたしはいっぺんでこの蝶が好きになった。
7月の尾瀬…鳩待峠からの木道を歩いている時、目の前に現れた黒い蝶。
黒い翅の中に浮かんだ、目玉模様の中心に水色の星が輝いていた。
その輪郭も水色の環になっていて、漆黒の宇宙に輝く天体のようだった。

〜和名は、黒日陰(クロヒカゲ)って言うんだけれど、
月の女神のほうが、だんぜん素敵だろう?ダイアナさんサ…

うん、だんぜん素敵!ダイアナさんかぁ…

わたしが、蝶に興味を持ち始めた頃の事だった。
樹間を忙しそうに素早く飛び交う黒い蝶。
知らなければ見過ごしてしまいそうな地味な蝶だけれど、よく見ると宇宙を連想させるくらい美しい翅を持っているのだった。
この蝶を見て、こんな小さな翅の中に宇宙を見た“月の女神”と名付けた人の素晴らしさを思う…

わたしは奥多摩の森で、今年も、ダイアナさんに出逢いましたよ・・・

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晩夏の花に…
『晩夏の花を見に行きませんか?』
誘われるままに、訪れた山里の森で、ひっそりと咲く野の花に出逢った。
ソバナの紫色を見て、『いい色だね。好きな花なんだ。』と、あなたは言った。
森影の小径に楚々と咲いたソバナの花に、わたしは、あの日の面影をそっと重ねます。

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雨の雫が残るその花びらは、透き通るように色が抜けて、透明なガラス細工のよう。

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森の妖精のうす紫のドレス?それとも、森の小人のとんがり帽子?
ほら、あのモミの木の梢に、あの切り株にそっと座っているのは秋色の風?
晩夏の森は、どこか、ひそやかで物語が始まる予感がするのです。

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初めてレンゲショウマを見たのは、ちょうどこんな風に霧が立ち込めた朝でしたね。
今年もこの森ではレンゲショウマが咲き始めましたよ。

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霧の海に漂いながら、ほんのりと明かりを灯しているようで、思わず見とれてしまうのです。

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青が澄む早朝の森にひそやかに目覚めゆく…

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木洩れ日の中に、あなたはいない…

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だけど、面影は、ここにある…

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レンゲショウマの森を抜けると、色鮮やかな晩夏の花が、囁きかけてくるのです。
艶やかにわたしを魅了するフシグロセンノウの花…一輪。

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雷雨の来そうな晩夏の森で、凛と咲いていたことを思い出す。
薄暗くなった林床で、一際明るく咲いていましたね…

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芳しく香る山百合の花は、美しく気高い。

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ほんの数日で花は終わってゆく…
木洩れ日の中、眠るように…森に還るのですね。

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花ではないけれど、トチバナニンジンの赤い実が、目を引いた。
きっと、潔く、その実を投げ出している姿が一際美しいのでしょう。

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夏の初めから咲いているホタルブクロも、役目を終えて、もうじき往くんですね。

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黄色い花も咲き始める。こちらはキツネのボタンでしょうか?
(このお花は、ダイコンソウだそうです。かぜくささん、いつもありがとうございます。)

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マツムシソウが咲く草原に佇めば、うす紫の花の波
マツムシソウという名前がついたのは、この種子が、巡礼の僧侶が持つ、「まつむし」と言う鈴の形に似ているからだと言う。

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花の中で幸せそうなハナムグリ。

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花に舞う、アカタテハ。

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マツムシソウ・・・美しい花…

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シモツケソウのピンクの花は、優しげな草原の花だと思う。
(このお花は、シモツケだそうです。決め手は葉の形だとむじなさんがおしえてくださいました。確かにぜんぜん違ってました。(^_^;)むじなさん、どうもありがとうございます。)

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ヒヨドリ花には、白い蝶…そっと差し伸べたわたしの指に、蝶はそっと乗ってくれました。

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風に揺れるキンミズヒキの黄色い星…

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オカトラノオの白い星…

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ヤマジノホトトギス…あなたは、不思議な花だと思う。
あなたを美しく撮ってあげたい。

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ハマナスの花が、柔らかな花びらを広げる。
たおやかな花色に、尾瀬のタカネバラを思い出す。

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初秋の花、愁海棠も、想いの蕾を紅に染める。

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いかがでしょうか?
こちらの森は今、晩夏の花が咲き誇っています。
あなたも一度いらっしゃいませんか?
花咲き山の、晩夏の森へ…

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綺麗な夕焼け…
♪ 陽気な風が秋の夕べに漂う
  せみなく声に わたしの心は潤む
  
    夕ばえ坂にある
    山の家に
    あなたと過ごしたぬくもりが
    いなごの羽音が
    なつかしげに
    わたしに話しかける…

五輪真弓さんの“夕ばえ坂”という曲を思い出す。
そんな夕暮れだった。

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わたしが夏を好きなのも夕焼けが綺麗だからということもある。
ひとしきりの蝉時雨が、森から響きだし、切ないような懐かしさを連れて来る。
子どもの頃は、せみとり網を持って、森の中を走り回ったものだった。
めいっぱい遊んで満足した面持ちで夕暮れと共に家路を急ぐ。
黙々と夕空に立ち上がった入道雲や、路地裏の夕餉の煙や
ヒグラシの声を聞きながら帰ったものだった。

石蹴りやハンカチ落しや、缶けり、六虫
そんな遊びもしたけれど、男の子たちに混じってのせみとりは、スリルがあってとっても好きだった。
そして、夕暮れの空へと取った蝉を放してあげるのだった。
『蝉は、3年も穴の中で暮らして、やっと外に出ると1週間で死んでしまうんだよ。』
父がそんな風に言ったからだった。
放してあげた蝉は、少し涼しくなった夕空へと飛び去っていく。
あの時の蝉は生きながらえたのだろうか?分からないけれど、子供心にも翌朝、虫かごの中でひっくり返って死んでしまった蝉の亡骸を見るのは怖かったのだ。

夕空を見ながらそんな子ども時代を思い出したりして…

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日の落ちた山際から燃え上がるような金色の雲がたなびき、
やがて西の空を染め上げる。
美しい夕映えはやがて反対側の東の空もほんのりと茜色に染め上げてゆく。
まだ、水色の空の青に、オレンジ色が溶け合って、光は微妙な翳りを少しづつ深めていった。

仕事帰りのけだるさも手伝って、わたしは何度も夕空を見上げた。
家に帰れば、また忙しいわたし・・・せめてひと時、懐かしさのセピアな世界を彷徨っていたいナ…

   ♪ 山の公園に そっとたたずみ
     暮れゆく都会をながめれば
     いつかあなたが 弾いてくれた
     ギターのメロディ きこえてくる

夕ばえ坂にたたずんでみたいナ…

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