FC2ブログ
写真の日付をみると、それは2005年4月18日の事だった。
はじめてヒナスミレに逢えた。わたしは、一人で御前山へと登っていた。
湖岸の桜は見頃を向かえ、そろそろ、カタクリも咲き始めるのではないかと思ったが、心ひそかにスミレとの出逢いを期待していた。

gozen0067.jpg

その頃のわたしと言ったら、スミレの花はタチツボスミレとエイザンスミレとマルバスミレぐらいしか知らなかった。
そんなわたしにスミレのゆかしさ、奥行きの深さ、そして何よりも愛おしさを教えてくれた人がいた。
その人は、ヒナスミレの何とも言えない花色が好きだと言っていた。
『スミレのプリンセスと言われている花だよ。桜貝のような花の色が素敵なんだよ。』
そんな言葉を聞きながら、わたしは、どんどん、ヒナスミレへの憧れが膨らんでいたのだった。
イワツバメたちが飛び交う、眩しい春の訪れを感じさせる日だった。

iwatubame-1.jpg

木の根につかまりながら、急な登りを登り始めた時だった、どこからか高らかな囀りが聞こえ始めた。
わたしは、キョロキョロと辺りを見回して、急な斜面から立ち上がったイヌブナの新緑の中に目にも鮮やかなオオルリの姿を見つけたのだった。
美しい青い夏鳥…ああ、もう、やってきたんだ!そんな喜びに胸がいっぱいになった。
双眼鏡で覗いていると、立っている斜面が急だから、体のバランスを崩してしまいそうだった。
わたしは、片手で木の根を掴もうとした時、その根元に、小さくて愛らしいスミレの姿を見つけた。

gozen0061.jpg

そのスミレは、わたしを見上げて笑っているような気がした。
「まぁ、かわいい♪はじめまして、すみれちゃん、あなたはだあれ?」と、独り言を呟いてそっとかがみこんだのだった。

gozen0064.jpg

そして、気が付くと、あちらにひとつ、その向こうにひとつ、あら、あんなところにも…
と言う具合に点々と咲き続く、ピンク色のスミレがあった。
とっても小さくて、やわらかなピンク色、陽射しに透けて輝いている。

gozen0055_20090421234037.jpg

かわいいなぁ…ほんとうに、かわいいなぁ
しばらく見入ってしまう…そして、ファインダー越しに見つめあう。
よく見ると、もしかしたら、ヒナスミレかもしれないと思った。
上品なやわらかなピンク色…そう、櫻貝のようなシェルピンク。

gozen0057.jpg

すると今度はひらひらと、小さな蝶が尾根の上から降りてきて、目の前のアセビの葉に止まった。
なぜか横に倒れたままだ。どうしたんだろう?怪我でもしているの?
この時はそう思って不思議だったけれど、あとから、この蝶はコツバメという蝶で、こうして体を倒して、日向ぼっこをする習性だと言う事を知った。
それにしても、毛皮をまとったような感じの翅を持っていて、黒目がちな可愛い蝶だった。

kotubame.jpg

ミツバツツジも風に揺れて、春は満ちてゆく

gozen0063.jpg

やがて道は杉林の中を行くようになる。この杉林を抜ければカタクリの咲く尾根になる。
そう思って歩いていくと、杉木立の森の中に、ちいさなブーケのように、咲き続くスミレを見つけた。

gozen0048_20090421235935.jpg

「わぁ~すごい!こんなにたくさんの株」スミレのブーケは少しも痛んだところが無い。
たった今咲いたばかりのように綺麗な花ばかりだ。わたしは夢中になって森の奥へと入っていった。

gozen0051.jpg

それは、ヒナスミレの森だった。わたしは、この時から、プリンセス・ヒナの虜になったのだった。

gozen0052.jpg


カタクリの尾根道は、明るい広葉樹の中に伸びていた。
まだ、カタクリには少し早かったのかあまり花数はなかったが、それでも綺麗な花が、燦々と降り注ぐ陽射しのなかで、美しく咲いていた。

gozen0037.jpg

gozen0039.jpg

gozen0047.jpg


明るい陽光溢れる尾根道

gozen0029.jpg

ハシリドコロが、釣鐘状の花をたくさんつけていた。咲き始めの花姿は可愛くてシックで素敵だ。

gozen0028.jpg

この尾根には、真ん中に穴が開いた巨木がある。もう、枯れ死しているのかと思っていた。

gozen0031.jpg

ところが、この時、なんと芽吹きがあることに気付いた。
この樹は、生きているんだ!こんな風に風穴が開いた体で、厳しい冬を越え、また巡りくる春に命の灯を燈し続けている…そう思ったら涙が浮かんできた。

gozen0035.jpg

そして、カメラを向けていた時、その樹の梢から、ゴジュウカラが姿を現した。
ゴジュウカラは、その樹の内部をくり抜いて、今巣作りの真っ最中だったのだ。
小さな穴から中へ入ると、樹の欠片を口にくわえて、外へと捨てている。

gozen0001.jpg

わたしは、ゴジュウカラを見たのも、巣作りをしているのも始めて見て、とても感動したのだった。
この日、御前山では、ツツドリの鳴き声も聞けた。
こうして、帰りは、あまり人が歩かないようなコースを栃寄沢へと下山した。

gozen0018.jpg

踏み後のような道を辿って枯葉に膝までもぐりながら降りていくと、今度は目の前の木の枝に、大き目の赤い鳥が降り立った。頭は銀色に見えたし、体は赤い、ベニマシコよりずっと大柄だ。
もしかしてオオマシコ!そう思った。残念ながら、カメラに収める事は出来なかったけれど、今でもあの鳥はオオマシコだったと信じている。

gozen0015.jpg

水の枯れた沢を渡ると、こんな巨木も聳えていた。

gozen0017.jpg

ヨゴレネコノメやツルネコノメの花が咲いていた。

gozen0012.jpg

gozen0014.jpg

そして、沢にはまだ、残雪が雪渓のようになって残っていた。

gozen0016.jpg

ゴハンギョウの滝を望みながら、長い下山路を辿っていった。
日も暮れ始め、バス停に着く頃には真っ暗になりかけていた…ひとりぼっちの下山路で泣きたくなった事を覚えている。
そんな気持ちを支えてくれたのは、その日のさまざまな出逢いだった。
今でも鮮明にその時の事を良く覚えている。
あのヒナスミレの森に、その後、まだ、再訪していない。
いまでも、咲いていると思う。そして、あの尾根の巨木は、今年も芽吹きの季節を迎えただろうか?
逢いに行きたいと思いながら、このブログを書いている。
そして、この時依頼、早めの下山を心がけているのだけれど…

gozen0025.jpg
スポンサーサイト



2009.04.22 Wed l 追憶 l COM(0) TB(0) l top ▲
もしも、人生が川だとしたら、
きっと、ボクの川は、蛇行して
台風の後みたいに、濁っているかもしれないなぁ

でも、よく見ると
一箇所だけ輝いている場所があるんだ
もう、そこだけは、山奥の渓流のように
青く透き通っていて、魚も楽しく泳いでいるんだ

鳥たちもやさしい声で歌いに来てくれて
きれいな花だって咲いている
その花の名前はね ハナネコノメっていうんだよ

hananekonome-1.jpg


水面は、太陽の光を星が瞬くように空へ返しているし
水の一粒、一粒が、煌めいている

ボクの人生の川で一番輝いている場所は
やっぱり君と過ごしていた時間…
君を想っていた時間なんだ

いつか、遠い場所で、そんな風に人生の川を見てみたいな…
その時も、やっぱり隣で君が、
さざめく水面のように笑っていてくれたらいいなぁ

IMG_1457_20090327231337.jpg
2009.03.27 Fri l 追憶 l COM(4) TB(0) l top ▲
アイリスが3~4年生の頃だったろうか。
NHKの“みんなの歌”という番組が好きだった。
そのなかで、この歌がアイリスのお気に入りだった。

   銀のじょうくんから、ゆりちゃんにお手紙
   でも、銀ちゃんは字がかけません
   だから、春には封筒にさくらの花を入れました。

   銀のじょうくんから、ゆりちゃんにお手紙
   でも、銀ちゃんは字がかけません
   だから、夏には封筒に拾った貝を入れました。

   銀のじょうくんから、ゆりちゃんにお手紙
   でも、銀ちゃんは字がかけません
   だから、秋には封筒に真っ赤な落葉を入れました。

   銀のじょうくんから、ゆりちゃんにお手紙
   でも、銀ちゃんは字がかけません
   だから、冬には封筒にすくった雪を入れました。

   赤いポスト
   白い封筒
   鳥の切手…


『わたしね、この歌が凄く好きだったの。銀ちゃんて、とってもロマンチストだと思うわ。何だか、目に浮かぶのよ。その白い封筒が…そんなお手紙貰ったら感動しちゃうよね。
それに、最後のフレーズがすごくいいわ。赤いポスト 白い封筒 鳥の切手…色がとっても綺麗でしょ。あの頃はカワセミの切手だったよね。何だかふわっと浮かぶのよ。』と、アイリスは言った。

ほんとね…おかあさんも、その歌をよーく覚えているわよ。今でも目に浮かぶわ…
それに、あの頃のあなたの姿も目に浮かぶわ。いつも長い髪を編みこみにして、お下げに結ってあげると、大きな黒目がちの瞳でじっと鏡を見つめてた。そんな女の子だったのよ…

土曜日の午後、所用で出かけた車中での会話にしばし癒されたのだった。

IMG_1831.jpg
2008.10.20 Mon l 追憶 l COM(6) TB(0) l top ▲
十六夜の月に想い重ねて
いつか、こんな夜があった。
いくつも、こんな夜を越えてきたと思った。

越えても、越えても、
いつかまた、訪れるものなのかも知れない。
人の世の悲しみも、苦しみも、
そして、喜びも…

空蝉の瞬きのそのなかに、
繰り返される、ただそれだけ…

十六夜の月に想い重ねて
金木犀の香り零れて、神無月の静けさに漂う。
煌々と射す、月明かりを浴びて佇む
いつか、こんな夜があった。

IMG_5898.jpg
2008.10.18 Sat l 追憶 l COM(0) TB(0) l top ▲
鳩ノ巣駅から雲仙橋を渡り長閑な山里の風景の中を歩き始める。
夏の花咲く里の道は、郷愁の道…
あの路地から…あの畑の片隅や…庭の木陰に…
今は亡き父母の姿が、在るような気がした。

真っ青な夏空に、ノウゼンカズラの鮮やかなオレンジ色が映える。夏のビビッドな色合いなのに何故か郷愁を感じさせるのは、実家の濡れ縁の上に咲き誇っていた姿を思い出すからだろうか。

IMG_6245_20080804002549.jpg

父が日よけにと植えた花…藤棚のように、オレンジ色の花がいくつも下がって咲いていた。
夕暮れの風に揺れるこの花の下で、夕涼みをしていた父母の姿が偲ばれる。

ヒャクニチソウも色とりどり…百日綺麗に咲いているから百日草

IMG_6248_20080804002703.jpg

ピンクのサルスベリもふわっとして柔らかいレースのような花を寄せて咲いている。百日、紅いから百日紅(ヒャクジツコウ)とも呼ぶのだと、教えてくれたのも父だった。

IMG_6250_20080804002743.jpg

桔梗の花は、ひそやかな気高さと寂しさを感じる…
強烈な夏の日差しの中で、すくっと花茎を伸ばし、美しい端正な花を咲かせていた。

ほんの少しづつ翳り往く夏の影
晩夏の光のなかに潜む初秋の風のような一抹の寂しさが青紫の花陰に揺れている。

kikyounomado.jpg

アイリスはオシロイバナの花を見るとおじいちゃんとおばあちゃんを思い出すという。
遊びに行ったとき、祖父母と夕暮れにオシロイバナの種を摘んだ思い出があるのだと言う。
オシロイバナは何故か夕暮れにいよいよ優しくしっとりと映える花のような気がする。

色とりどりの松葉菊の花の色や、芙蓉の透明感のある柔らかい花びらの色や、夕顔の白い横顔や、
人の心に残せる言葉や色や、ぬくもりを里の花は持っているのだなと思う。

ふと、視線を感じて振り向くと、白い犬がこちらを見つめていた。
きょとんとした顔がかわいかった。吠えないでいてくれたのね。ありがとう…
子供の頃、実家で飼っていた白い犬を思い出す。
なんでもない風景なのに、何故かな…すべてにあなたを思い出す。

IMG_6252_20080804070444.jpg



2008.08.03 Sun l 追憶 l COM(2) TB(0) l top ▲