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去年より
おととしより
知り合った頃の君よりも
今ここで輝いている 君が一番素敵…

宮沢和史さんが、甘く歌う、「光」という曲です。
わたしは、この歌がとっても好きです。

いつも、いつまでも…こんなふうに想われていたなら、女性としてとてもしあわせ。
娘たちにも、そんな人に巡り合い、幸せな人生を送ってもらいたいと願っています。

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日曜日、山梨にいる長女が遊びに来た。
前の晩、夜中の12時に携帯が鳴った。見ると長女の名前…
少し不安になりながら出ると、明るい声で
『おかあさん、明日、彼が仕事になったから、実家に行ってきたらと言ってくれたから行ってもいい?もし予定があったらいいけれど…』と言う。
本当は、山に行くつもりだったけれど、「もちろん、いいわよ。」と答えた。
彼が、『妹の手術後、まだ一度も行ってないだろう。元気になった顔を見てきたら。』と言ってくれたのだと言う。
わたしは思いがけない長女の訪問に、嬉しい気持ちで休んだのだった。

翌朝、早い時間に家事を終わらせ、マイカーを飛ばして長女がやってきた。
『おかあさん、ただいま~!おとうさん、お久しぶりです。アイリス、体調はどう?』などと元気に言いながら長女は玄関のドアを開けた。
少し一休みしてから、早速、長女とアイリスと三人で、買い物に出かけた。
来月初めが誕生日の長女に、「プレゼントに、好きなものを買ってあげるよ」なんて言いながら(*^_^*)
あれこれ、選びながらの買い物は楽しい。
やはり、来月が誕生日だと言う彼は、靴を欲しがっていると言う。
「それじゃ、これで、彼に靴を買ってあげてね。お母さんからの誕生日プレゼントだと言うことで…」
と、長女にお金を渡しておいた。
三人で食事をし、その後、長女は行きつけの美容院で髪をカットしてもらい、とても可愛らしくなった。
そうこうしているうちに長男も仕事から帰ってきて、長女に、自分のお気に入りのジャケットをあげた。
ボーイッシュで背の高い長女は、男物でも良く似合って着こなしてしまうのだった。
『お兄ちゃん、いいの!ありがとう~♪』と、目を輝かせて長女は嬉しげな顔をした。
そう言われて、長男は、クローゼットから、ロングTシャツやジーンズも出してきて「これもやるよ。」と言った。もう、長女は満面の笑みだった。
わたしが作った心ばかりの夕食も、『ああ、久しぶりにおかあさんの手料理を食べたわ。ご馳走さま』と嬉しい言葉をくれた。
やがて、長女が変える時間が訪れ、わたしたちは、家族総出で表の通りまででて長女の車を見送った。
「気を付けて帰りなさいね。帰ったら電話ちょうだいね。彼にもよろしく言ってね」
『おねえちゃん、また、遊びに来てね。』
『ちゃんと、仕事頑張れよ。』 『しっかりやれよ。』
みんな口々の言葉で見送った。
長女は、車のウィンドウを下げて、『ありがとう、また来ます。』と、頭を下げ、まっすぐに坂道を登って走り抜けて行った。

わたしは、長女の車を見送りながら、娘の帰る場所は、もう、ここではなくなったのだとしみじみ思った。
彼が待つ山梨の家、それが、娘の帰る場所になったんだと思ったら、ちょっぴり寂しくて涙が浮かんだけれど、それこそが、娘のしあわせなんだと思えて、安堵の想いに心の中がほんのりと暖かくなったのだった。

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2008.03.24 Mon l 日々の想い l COM(3) TB(0) l top ▲

花のように 花のように
ただそこに咲くだけで 美しくあれ
人はみな 人はみな
大地を強く踏みしめ それぞれの花心に宿す…

沖縄出身の歌手、中孝介さんの“花”という歌を聴いたとき、いいなぁと思いました。

雨の中で、濡れた木の階段の隙間に、零れるように咲いたこの花を見た時、
この歌が、ふっと浮かびました。
外国種の園芸種のお花のには、疎くて、名前も知らない花ですけれど…
こぼれ種から咲いた花でしょう。
異国の地で、繰り返し芽吹くその姿に、強さと可憐さを感じました。
春の雨は、どの花にも、分け隔てなく優しく降るのでした…

オレンジの花は、長女の好きな花色です。
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2008.03.23 Sun l 音楽 l COM(2) TB(0) l top ▲
春分の日…
ハナネコの花を見に行きたいと思っていたら、朝から雨が降っていた。
木々の芽や、草花や作物の成長を促す、春の雨…二十四節気では穀雨というけれど
わたしは慈雨という言葉が好きだ。
慈しみ育てる雨と書いて慈雨(じう)英語だと“welcome rain ” と言うらしい。
何だかぴったりだと思う。

ハナネコは、雨だと花を閉じてしまっているような気がした。
そうだ、セツブンソウはどうだろう。
きっと白いガクが、雨に濡れて透き通っているような気がした。
ガラス細工のような可憐な春の妖精に逢いたいな…

里は梅の花が雨の中、美しく咲いていた。
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周りの里山や森も雨に煙る
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ミズバショウも、慈雨のなか
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ミモザの花も開き始めたばかり、葉っぱに雫をためていた。
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セツブンソウはもう終わりかけだと言う。
でも、その中の綺麗な花を探すのは、宝探しをしているようで楽しい。
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思ったとおり、白いガクが透き通るようだった。
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春の妖精は、潤みながら…
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こんなに小さなお花
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アズマイチゲは雫をためて
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セツブンソウも雫をためて
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移りゆく季節の中で、優しい慈雨に打たれながら、可憐な春の使者は往こうとしていた。
わたしも一瞬の季節を見送れたような気がしたのだった…
2008.03.23 Sun l 未分類 l COM(4) TB(0) l top ▲
アイリスと久しぶりに週末の森へ行った。
里は紅白の梅の花が咲き、ホトケノザやオオイヌノフグリも一面の花野を作っていた。
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この梅はお気に入り!
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いつもの水路を歩けば、やっぱりモズ吉とモズリンがやってきてくれた。
ひとつひとつの杭に止まって、追いかけっこをしているみたいだった。
『やっぱり、モズリンは可愛いね!』アイリスは双眼鏡を覗かなくても、もう、馴染みの鳥の名前が分かるようになってきた。
手術後、2週間、今日は初めて野を歩く。

『いつの間にか、春だね。冬鳥はもう帰ってしまったの?』
「そうね。たぶんね。先週、月曜日の朝にジョビコを見たきり見ていないから…」

畑では、ムクドリたちが餌をついばんでいた。
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桜の花芽もだいぶ膨らんできている。
「そうだ、もしかしたらウソが来ているかもしれないわよ。」
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「シデコブシももうじき咲くね」
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いつもの水路は大掛かりな護岸工事をしていて、水が浅くなり川床が覗けるようになった場所があった。
『あっ!あんなに小魚がたくさんいるわ。何の魚かしら?』
見ると、すばやく川床を滑るようにたくさんの小魚の影が動いた。
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「きっと、ハヤとかいう魚だと思うよ。こんなにいるとは思わなかったわね。」
『うん、これじゃ、カワセミどんが、この川に住んでいるわけだね。』

「獲り放題で、きっと、もう満腹になってるんじやない。(^_^)」
『でも、こんなに浅くちゃ、ダイブしたとたんに、くちばしが川底に刺さっちゃうんじゃないかしら。(^_^)』
良かった。アイリスに笑顔が戻った。

「梅のつぼみ、かわいいね!」
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『水仙、小さくってかわいい!』
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「ふきのとう、おいしそう!」
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『プリムラ、春の花束みたい!』
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「三色スミレも、冬から咲いてるけれど、こんな春の日差しの中で咲いてるのがいいね。」
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「ヒヤシンスも花盛りだね!」
『わたし、ヒヤシンスって、水栽培だけかと思った。地面にも植えるの?』
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「それは、そうよ(笑)もちろん地面にだって植えるわよ」
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「これは、なんていう名前かしら?真っ白な花びらが雪のよう…スノーホワイトなんてどう?」
『え~?かってに名前つけてるし(^_^;)』
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『春なのに、クリスマスローズって、素敵な名前ね~♪』
「そうね、しっとりとした花色よね、うつむいて咲く姿が趣があって名前のイメージあるよね。」
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「農機具とオオイヌノフグリのコラボ♪」
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『おかあさん、新鮮野菜だって!野菜のテープはこうして巻くのね♪』
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アイリスは、面白い物を見つけた!
「へぇ~!なるほど、ほうれん草とかを束ねるのね!」
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『今日は、カルガモもサギもいないね。帰ってしまう鳥なの?』
「いいえ、留鳥だと思うんだけれど、いないね~?」

『マガモはたくさんいるね。4組のペアだわ。』
「マガモこそ、渡り鳥のはずなのに変ね…帰らないつもりかしら?まったりくつろいじゃってるね」

『お母さん、あのカモ、真っ白い羽だけれど、マガモかしら?仲良く3羽でいるから親子かしら?』
アイリスが指差す方の川岸をみると、本当に綺麗な真っ白なマガモだった。
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(しゅーさんに伺った所、マガモに似ている固体もいるけれど、アヒルではないかとの事でした。
アヒルって真っ白だとばかり思っていましたが、こんなにマガモにそっくりな色のものもいるのを初めて知りました。アヒルって、マガモを飼育用に改良したものなんだそうです。見分け方はちょっと太めとの事でした(*^_^*)って、ことは、今までこの川でマガモだと思って見てきた鳥は全部アヒル?アヒルは渡りをしないので、晩春になっても残っていたら、みんなアヒルと言うことになりますね。しゅーさん、ありがとうございました。)

「今日は、カラスくんも撮ってあげよう。」
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『タンポポはもう綿毛になって、飛ぶ準備をしているね。 』
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『鳥かと思ったら、枝先に残ってるのはイガ栗だった(^_^;)』アイリスは双眼鏡を覗いて笑ってる。
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「あっ!キタテハよ!冬を成虫で越す蝶なのよ♪元気に目を覚ましたのね」
『ほんと、嬉しそうに飛んでるね!あっ2羽いる!』
2羽のキタテハはくるくると回りながらどこまでも高く青空の中を上がって行ったかと思うと、また離れて、野辺に舞い降りたりして遊んでいた。蝶たちは、きっと恋の季節なのね。
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「きっと、週末の森では、ルリタテハに逢えると思うわ。手にも止まってくれるのよ。」
そんな事を話しながら、春の野辺をのんびり歩いた。
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ホトケノザもオオイヌノフグリも春の絨毯
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週末の森も梅が花盛り…
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さっそく、ルリタテハのお出迎え♪
『ほんと!ブルーだ~♪何だかかっこいいね♪』
「うん、バットマンみたいでしょ(*^_^*)」
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花の広場は、トサミズキが咲き始めていた。
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ダンコウバイも花盛り
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ボケの蕾には、七色の光ボケが、生れていて、頑張ってみたけれど写真には上手く映らなかった。
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ぽかぽかのベンチで、たくさんの梅の花を眺めながらお弁当のおにぎりを食べていたら…
ホーホケ、ホーホケ、ケキョ…
「ん?ウグイス?」 「わたしもそう聞こえたよ。まだ、あんまり上手じゃないね』
「ウグイスの初音が聞けるなんて、ホント、春だね~」
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週末の森では、タチツボスミレが小さな薄紫の花を咲かせ始めていた。
林床に、ポツン、ポツンと咲いている。わたしはしばし、撮影に夢中になった。
アイリスは、カシラタカとヤマガラを一生懸命、双眼鏡で見ていた。
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山寺の茅葺屋根に映える椿
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椿って、和のイメージで好きな花だ。
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ミツマタの花も咲いていた。小さな花手まりみたいな花。
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小さな池には、木立が映りこんでいた。そんな水面にも春の気配が漂っていた。
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「さて、そろそろ帰ろうか?疲れたでしょう?」
『うん、足が筋肉痛になったみたい。』
帰り際、畑の片隅で、じっと佇んでいる鳥をアイリスが見つけた。
『あっ!キジ?』
「あっ、そうよ。オスのキジだわ!」
『すごい!初めて見れたわ。とっても綺麗な羽だね~♪』とアイリスは目を輝かせた。
疲れも一瞬吹き飛んだらしかった。
「キジは、野辺の使者だって、言った人がいるわ…」
『ふーん、何だか分かるような気がする。胸を張って堂々とした姿がそんな感じ…』
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わたしたちは、じっと、動かずに佇んでる野辺の使者にそっと別れを告げた。
この里山に息づいている鳥たちが、こうして暮らしていける環境がずっと続いてあることを願わずにはいられなかった。
いつも逢えるとは限らないけれど、野辺の使者さん、またいつか逢いましょうね。

「初めてなのに、少し疲れさせてしまったかも知れないね。明日は家でのんびりしようね。」
『うん、でも、楽しかったよ。ありがとう。』アイリスは嬉しそうに笑ってくれたのだった。
2008.03.17 Mon l 里山 l COM(2) TB(0) l top ▲
アイリスは最近少し元気がない。
丈夫な体になるために、勇気を振り絞って臨んだ手術。
アイリスにとって、その手術を受けるまでの心の葛藤はいかばかりだったかと思う。

自分の気持ちを強く、強く持つこと、逃げないこと…。
実際、彼女は泣き言を言わなかったし、怖いのを堪えてよく頑張ったと思う。
手術を受ける前に、一度も“怖い”“手術を受けたくない”と言う言葉を口にしなかった。
手術さえ終われば元気になれる。いろんなことに挑戦できる体になれる。

そんな想いが彼女を支えたのだと思う。

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果たして手術は無事成功したものの、いまひとつ元気になれない。
こんなことでは、新しい仕事も探せない…
自分はいったい何をやりたいのだろう?何ができるのだろう?

そんな焦りや、世の中から取り残されたような寂しさが、心の中に忍び込んできたのだろう。


何だか、自分がとても小さくて、つまらない存在に思えてしまうこと。
青春時代には良くあることなのよ。

自分に自信が持てなくて、自分には何もないような気がして落ち込んでしまうこと。
若い日々には、そんな悩みをお母さんも持っていたのよ。

本当の友情って何? 心から人を愛するってどういう事?
ときめく夢や、愛を分かち合える人が欲しいとか、そんな悩みや憧れを胸に秘めていたものよ。

それが、若いって言う事なのかもしれないね。

20代の頃に、感じていた青い果実のような甘酸っぱい悩みを思い出した。
訳もなく流したほろ苦い涙を、強がっていた寂しさを思い出した。

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大丈夫よ、あれだけの手術をしたんだから、多少のギャップはあると思うわ。
日にちが経てば元気になれるから、焦らなくてもいいのよ。

元気になって、また仕事を始めれば、きっと寂しさも忘れると思うよ。
お友達も出来るわよ。でも、その為には、自分の心を開いていかないとね(^.^)


アイリスは、涙を拭いてこう言った。
『わかってる…寂しいのは自分の心が小さいからだって。自分を変えていかなくちゃね』
そして、一生懸命、笑顔を作った。

昔、こんな歌があったなぁ…

♪~青春時代が夢なんて、あとから、しみじみ想うもの
  青春時代の真ん中は、胸にトゲ刺すことばかり…

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アイリスは青い時を生きている。今は悩んだりする時もあるだろうけど
いつかは懐かしく想う時がくるよ。あなたの人生はこれから、
まだまだたくさんの人たちに出遭わなくちゃね。

あなたのこころに寄り添ってくれるような人や
あなたの人生観を導いて暮れるような人や
一緒に、何かを探してくれるような人や…

きっと、あなたの人生には、たくさんの素敵な出逢いが待っているはずだからね…



明日、アイリスは森を歩いてみたいといった。

うん、明日、行こうね。

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2008.03.14 Fri l 日々の想い l COM(4) TB(0) l top ▲
今週も1時間の残業を終えて家路につく頃は、7時近くなっている。
でも、いつの間にか春めいて、とうとうわたしもダウンのコートを脱いで薄手のジャケットに切り替えた。
つい、先日までコートの襟を立て、ふんわりとマフラーを巻いて家路を急いだのが遠い昔の事のような気がするくらい、いつか知らぬ間に季節は移ろうもの…
冬に、さよならを言い忘れて、何となく忘れ物をしたような気がした。

おとといの帰り道、正門を出ると、東の空に細くて薄い新月が浮かんでいるのに気がついた。
何となく、横にかしいでいて、夜空で誰かがそっと微笑んでいるような月だなぁと思った。
夕べも少し太くなった三日月が、前の日よりも高いところで笑っていた。
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今夜も暖かいおぼろげな春の宵、『空の月もなんだか眠たげだね…』と、あなたが言った。
春の三日月は、秋より横に寝転んでいて、春三日月と言うんだって…
あなたから教えてもらった言葉を思い出す。

いつもの道を家路を急いでいたら、夕闇の中に、白梅が白く香ってはっとして足を止めた。
柔らかでほのかに漂うその芳香は、なおさら季節の移ろいを感じさせる。

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ずっと昔、三月も終わりに近づいたある日、私鉄沿線の見知らぬ駅に降りて、駅前の喫茶店で待ち合わせをしていた。
わたしが改札口をでると、あなたはもう待っていてくれた。軽くお茶をした後、住宅街の中の小道を抜けて公園の池へと歩いた。
細い路地裏はとても静かで、時折り、どこかの家の窓辺から、ピアノの音色なんかが流れてきたりした。言葉少なに、ひそやかに辿れば、街燈に照らし出されて、二人の影法師が長く伸びていた。

穏やかで風もない春の宵、ほのかな香りに足を止めると、おぼろげな夜空に、しら梅が白く浮かんで、その花びらがさらさらと、音もなく散っていた。
手を伸べれば雪のように、わたしの手のひらに舞い降りたことを、ふと思い出した…

あの時は、そう、石神井公園の桜を見に行こうと、あなたが誘ったのでしたね。
誰もいないボート池、岸辺には葦の新芽がふいて、小さくさざ波が寄せていた。
桜にはまだ早くて、街灯の明かりが寂しげで、あなたは、手持ち無沙汰そうだったわね。

『ごめん、ちょっと早かったね。』

「いいえ、知らない街って素敵!夜道の散歩も、ちょっとスリルがあって面白かったわ!」

二十一歳のわたしは、子供っぽくて、二つ年上のあなたも佐渡から上京してきた純朴な青年だった。
あなたと知り合ったのは、前の年の一月
誰も訪れる人がいない冬の奥武蔵の低山で、偶然出遭ったふたり。
そして、その年の春、カタクリの花が林床にこぼれるように咲いていた奥秩父の山で再び、出会った。

奇跡的な再会に、何だか話が弾んだ。帰り際に電話番号を聞かれて、少し迷いながらも教えたのだった。
それから数ヶ月が経った夏の日に、『北アルプスのお土産を買ってきたから渡したい』と、あなたから電話があった。
真っ黒に日焼けした顔のあなたは、山の話をいっぱい聞かせてくれた。
憧れていた高山植物の写真もいっぱい見せてもらった。
楽しい語らいだったけれど、あなたと会ったのはそれきりだったわね。

そして、あなたのことを忘れかけた春に、もう一度電話が鳴った。
婚約していたわたしは、その事を告げた。
『そうか、おめでとう。もう一度だけ逢いたいな、良かったら石神井公園の桜を一緒に見に行かない?』との、爽やかな言葉に懐かしさから、青春の思い出に、会う約束をした。

あの時、何を話したのか、もう覚えていないけれど、たった一つだけ覚えている会話があるのよ。
「結婚したら、多分もう、山に行かないと思うわ。彼は山に行かない人だから…」と言ったわたしに、
『君は、おばあちゃんになっても山に登っている人だと思うよ。登っていて欲しいなぁ。』
と言ったあなたの言葉。

あなたと逢ったのは結局、それが最後だったけれど…

今も元気にどこかの山を歩いているのかしら?

この東京のどこかで暖かい家庭を築いているのでしょうか?
それとも故郷の佐渡に帰ったのでしょうか?

あなたが予言したとおり、山に戻ってきた今のわたしを見たら、あなたは何ていうかしら?
きっと、ちょっと照れたようなはにかみ笑いで、
『ホラね。やっぱり君は山を歩いてると思ったよ。おばあちゃんになっても、歩いていて欲しいなぁ…』って、言うのでしょうね。

今年は、奥秩父のあの山に登ってみようかしら?
あの時のように、カタクリが咲く頃に…

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2008.03.12 Wed l 未分類 l COM(1) TB(0) l top ▲
今日も暖かな一日でしたね。
でも、花粉が凄くて参りました…(^_^;)
花粉症の方は、しばらくはじっと我慢の子ですね。
わたしも、かなり重症者なんですが、それでもめげずに外歩きがしたいです。

梅の花に惹かれて…写真を撮りに行きたくなりました。
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今日は、サイトの方の更新のお知らせです。
2月初旬に出かけた海沢三滝の結氷の様子をレポしました。
ほんの少し前、冬の奥多摩を写真で綴りました。
よろしかったら、ご覧いただけると嬉しいです。

こちらからどうぞ→ 奥多摩 結氷の谷(海沢三滝)
2008.03.10 Mon l 日々の想い l COM(2) TB(0) l top ▲
今日は春めいて、とっても暖かな陽射し…
「アイリス、どう?気分は?」
わたしは、アイリスの部屋に、そっと起こしに行った。
『うん、だいじょうぶ…行けそうだよ。』と、アイリスはベットの中で体を伸ばした。

弟に送迎してもらい、今日はゆっくりと父母の墓参に出かけたのだった。
アイリスも手術後、1週間、まだ、傷跡や胸の動悸が治まらず、不安そうではあったけれど
久々の外の空気は、気晴らしになったのじゃないかと思う。

実家へと向かう道すがら、路地や家々の庭には白梅や紅梅が美しく、暖かな陽だまりに咲き競っていた。
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畑には、どこまでも咲き続くホトケノザのピンクやオオイヌノフグリのブルーの絨毯が広がっていて、それは長閑な小春日和だった。
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「おじいちゃん、おばあちゃん、アイリスの手術が無事終わりました。アイリスは頑張りましたよ。見守ってくれてありがとう…」
父母のお墓の前で報告をしながら、お花やお供え物をしている時、チチチ、チチチと高い声で囀る鳥の声が聞こえてきた。
「あら、何の声かしら?可愛い声ね。」 『うん、聞こえてるね。』
二人して、梢のほうを見上げたりしていた。
墓地の周りを本当に小さな小川が流れているのだけれど、そちらを見た瞬間、カワセミの翡翠色の姿が目に飛び込んできた。
「あっ!カワセミがいる!」ふたり、異口同音に叫んだ。
カワセミは、川面をぐるっと回って、すぐ側の川岸の杭に止まったのだった。
「驚いた、こんな所にカワセミがいるなんてね~双眼鏡、車に置いてきちゃったわ」と、わたしが言うと、『さっきの声は、カワセミドンだったのね』とアイリスも嬉しそうだった。

わたしたちが、フェンスにそろり、そろりと近づいたのに、カワセミは一向に逃げるそぶりはない。
時折り、羽ばたいてホバリングしては、杭や土手を飛びまわっていた。
その羽の翡翠色が、陽射しに輝きそれは美しい姿だった。
そのうち、美しいオレンジ色のジョウビタキもやってきて、一緒に飛び回ったのだった。
やがて、囀りを残して飛び去って行ったカワセミたちを見送って、ぽつりと弟が言った。
『翼のあるものは、天の使いだと言うよ…』

『そうかぁ・・・そうなのかなぁ?おじいちゃんとおばあちゃんが、鳥になってやってきたのかしら』

「うん、きっと、そうだよね。」
アイリスとわたしは、鳥たちが飛び去った青い空をいつまでも見上げたのだった…
2008.03.08 Sat l 日々の想い l COM(2) TB(0) l top ▲
子供の頃の実家は、東に、ケヤキ、梅、南に松、モッコク、西には柿、そして北には栗の木が植えられていた。
芽吹きの頃、ケヤキは、美しい萌黄色の葉を柔らかな風に託した。
春の宵、梅は薄いピンク色の花びらをはらはらと散らし続けた。
梅雨の頃、栗の木は白い花を咲かせ、しとしとと雨粒はトヨを伝った。
夏の日差しの中で、松は青々と繁り木陰を作り、蝉時雨、日がな一日。
初秋の空に赤とんぼ流れて、柿の実が紅く実った。
木々の葉が散り敷いたあとの冬木立は、凛として佇んでいた。

わたしは、北側に面したガラス窓が好きだった。
ちょうど、頬杖をついで寄りかかって見るのに都合の良い高さだったし、
通常の出入り口ではないのに、この窓枠によじ登って部屋に出入りするのも好きだった。
風邪をひいて、学校を休んだ時、いつも布団に寝ながら、透明な窓ガラス越しに、
風に揺れる栗の木を見ているのが好きだった。

晩秋のある日、栗の木の下で母が泣いていた。
祖母が亡くなって数日経った頃だったのだろうか?
白い割烹着の裾で目頭を拭っていた。
隣のおばさんも目を潤ませていた。
小学校3年生ぐらいだったわたしは、北窓から、母はとっても悲しいのだろうと思って見つめていた。
人は死んだらどこへ行くのだろう?そんな事を漠然と考えていた。

娘の手術が終わってから、ふと、そんな母の姿を思い出していた。
そして、娘が退院してきた翌日、はっと気付いた。
3月1日は父の命日だった…そして、3月30日は母の命日。
娘の手術の時は、「お父さん、お母さん、どうぞ見守っていてね…」なんて祈っていたのに。
命日を忘れるなんて親不孝な娘です。ごめんね。お父さん…

柿の木の下で泣いていた母の姿を思い出したのも、その事を思い出させてくれたのかも知れなかった。

明日は、お墓参りに行ってこようと思う。
大好きな北窓から見た風景を懐かしく思い出したけれど、実家にはもう、あの北窓はない。
そして、栗の木もケヤキも、松も、梅も柿の木も、今はないのだけれど…

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2008.03.08 Sat l 追憶 l COM(0) TB(0) l top ▲
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3月3日は、桃の節句、ひな祭り…
今日、アイリスは退院しました。
ご心配して頂きましたみなさん、本当にありがとうございました。
お陰さまで経過も順調です。きっと、桜の咲く頃には、元気に森や里山を歩けるようになると思います。
先週の27日から6日間の短い間なのに、何だかずいぶんと長い月日が流れたような気がします。
昨日、病院へ向かう前のほんの少しの時間週末の森に行って見ました。
ほんの1週間足らずの間に、冬は春に季節をバトンタッチしたみたいです。
紅白の梅の花が美しく咲き競う里山でした。
畑の片隅ではホトケノザやオオイヌノフグリが、ほっこりした土のうえに、愛らしく詩っていました。
知らぬ間に、移ろう季節…冬にまだ、さよならを言ってなかったなぁ…なんて思いました。
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アイリスは、タクシーから降りるとすぐに、『おかあさん、チャークは元気?』と聞きました。
「それがね…おとといの晩、病院から帰ってきたら、ぐったりしていてそのまま静かに息を引き取ってしまったの。」と、精一杯のウソをつきました。
『ええ?…』 みるみる大粒の涙が頬をつたいます。
家に入り、チャークの亡骸をそっと抱いて、アイリスは頭を撫でていました。
「でもね。苦しまなかったのよ。眠るように安らかだったよ。きっと、年を取ってしまったのね。寿命を全うしたとんだと思うわ…」
『もっと、可愛がってあげればよかった…。チャークはしあわせだったのかな?』
「うん、しあわせだったとおもうよ。きっと、アイリスに、ありがとうって言ってるよ。」
『わたし、入院する時、何となくチャークが遠くへ行ってしまうような気がしていたの。そして、わたしも帰ってこれないかも…って思ったの。でも、わたしは、帰ってこれたけれど、チャークは逝ってしまったのね…』そう言って、また、とめどなく涙…。
「きっと、チャークには、分かっていたのよ。アイリスを守ってくれたんだと思うよ。」
『…』
「動物を飼うって、いつかは、お別れの時を迎えなくちゃならないのは、仕方のないことなのよ。」
『うん。』 「安らかに、眠ってもらおうね…」
そんなやり取りの後、アイリスなりに、チャークとお別れできたようでした。
干草を引いて、好きだった餌を敷き詰めてあげました。
生きとし生けるもの、みんな限りある命を生きているのだと、
そして、それが生きると言うことなのだと改めて思いました。

弥生三月、春の日に、ひとつの別れがありました。
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2008.03.03 Mon l 日々の想い l COM(0) TB(0) l top ▲
『彼が、このお守りを貸してくれたんだよ。』
入院する前の日曜日、帰ってきたアイリスは紺色のお守り袋を見せてくれた。
お正月に初詣に行き、二人で買ったお守りを、彼が貸してくれたのだという。

彼に手術のことは話したけれど、数日間の入院ですむ簡単な手術だと話したらしい。
手術が終わって歩けるようになったら連絡するねと言ったという。
『だって、心配させたくないから…。手術後の辛い顔を見せたくないし…。』

『おかあさん、平気だよね。わたし、死なないよね…』そんな風に笑いながら言ってたけど
本当は、とても心細くて仕方がないはずだった。
とてもナイーブなところのある娘、末っ子で甘えん坊で怖がりなアイリスが、手術を決意したのには
将来、結婚した時、丈夫な体でいたいと思いもあったようだった。
いつか、母となる時、子供を守ってあげられる強い母になりたいのだと言っていた。

本当は、彼に側にいて欲しいはずなのに、心配させたくないと言う…
そんなアイリスがいじらしかった。

手術室に向かう前に、アイリスは小さな巾着袋をわたしの手の中に託した。
『おかあさん、○○君のお守りを、落とさないように預かっていてください。』
その袋の中には、赤いアイリスのお守りと紺色の彼のお守りが、そっと寄り添いあうように入っていたのだった。
きゅっと、締められた袋の口からは、赤と紺色のお守りの紐が覗いていた。

それを見たら、アイリスの胸のうちが見えるようで、涙が零れた。
『一緒にいるよって言うことなのね。○○君もやるじゃない。』長女も目頭を押さえた。
そして、そんな純な恋心が、『何だかうらやましいね…』と言ったのだった。
「頑張れ…アイリス。外で待っているからね!」
手術室の中に消えていくアイリスを乗せたベットを何とも言えない思いで見送って手の中のお守りを握り締めたのだった。


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2008.03.01 Sat l 日々の想い l COM(2) TB(0) l top ▲