今年の夏、雷雨に会って、急いで下山途中の三頭山でのこと…
黒雲と雷鳴が背後に迫って、わたしは、山頂を踏むと、きびすを返すように、一番早く降りれそうな三頭大滝への道を選んで降り始めた。
走るように降り始めた時、薄暗い林道に、はっと目を引くように黄色い花が咲いていた。
輝くように、数輪寄り添う小さな五弁の花びら…。「きれい…」
初めて見る花だった。急いでいるにもかかわらず、足を止め、ザックにしまったばかりのカメラを取り出した。
そして、シャッターを切ろうとした時、シャッターを押し込んでも、いつもの手応えがなくて、クシャ…と心もとない音がした。
「あれ?どうしたんだろう?」何度か試してみるものの、やっぱり、シャッターが上手く切れなかった。
暗いせいなのかも知れないと思い、降り始めた雨からかばうように、カメラをザックの奥にしまった。
ポンチョを頭からかぶって大慌てで下山したが、滝のような雷雨にずぶ濡れになってしまった。
夏の夕立は気まぐれなもの。やがて、三頭大滝まで降りてくると雷雨も上がり、いくらか晴れ間すら覗き始めた。
わたしは、もう一度ザックを下ろし、カメラを取り出してシャッターを押してみたが、やっぱり、あの軽快なシャッター音は、聞こえなくなっていた。
家に帰ってから調べてみたが、どうもシャッター幕が開かないような気がした。
壊れてしまったようだった。
2003年の5月、まだ、出始めたばかりの初代EOS Kiss デジタルを購入した。
あれから、5年、何処へ行くにも一緒だった。思い出いっぱいのカメラだが、直すには相当費用がかかりそうだった。直してあげたいけれど、どうしようかな…と迷っていたら、ネット仲間のこいちゃんが、使用していない初代EOS Kiss デジタルがあるからと貸してくださった。
わたしのカメラと全く同じ機種なので、使い勝手も同じで、何の違和感も無く使わせていただくことが出来た。
こいちゃんから、譲っていただく事にして、次の週からこのカメラが、わたしの山歩きの相棒になったのだった。
そして、月日が過ぎて、わたしのEOS Kiss は、カメラボックスの中に忘れ去られていた。
ある日、職場の友人で、何度か山を一緒に歩いてくれたひでちゃんが、『しーちゃんのカメラ、直さないの?』と、聞いてきた。
「うーん、直すとかなりお金がかかりそうだし、直るかどうか分からないし…今は、譲ってもらったカメラがあるから。」と、答えると、ひでちゃんは、『機械だから、ぜったい直るはずだよ。直してあげたら、きっとカメラも喜ぶと思うよ。』と言う。
そして、サービスセンターに持ち込んで見るから自分にカメラを預からせて欲しいと言ってくれた。
それから、1週間ほどしてひでちゃんからメールが入った。
『しーちゃん、やっぱり、シャッター幕一式交換で、かなり費用がかかるそうです。なんと、6万回もシャッターを切っているんだそうだよ。凄いよね!!で、お願いがあるんだけれど、このカメラを譲ってくれないかな?
今は無理だけれど、お金を貯めて、このカメラを直して使ってあげたいんだ。なんだかさ、その方がカメラも喜ぶと思って…(^_^)』
わたしは、ひでちゃんの申し出をありがたく受ける事にした。
この5年間で、6万回もシャッターを切っていたんだ。そんなに、酷使したら、カメラも壊れる訳だと思った。
そして、それほど、このカメラにお世話になった事になる。わたしの腕前では、そんなにいい写真は撮れなかったかもしれないけれど、季節の中の美しいものを、ファインダーを通して一緒に見続けてくれたのだと思った。
それなのに、壊れたからと、わたしは、忘れてしまっていた。
ひでちゃんは、忘れずに、直してあげようとしてくれている。
全てが当たり前のように使い捨てにされる世の中で、ひとつの物を大切にしてくれるひでちゃんの想いに、わたしは、とても心を打たれたのだった。
いつか、蘇った思い出のEOS Kiss と、ひでちゃんと一緒に、素敵な景色や美しい花を撮りに出かけたい。
そう思った。そして、もう一度、カシャ!という、あの軽快なシャッター音が聞きたいと思った。
せせらぎと、鳥の声と、風の音が聞こえるだけの静かな森で、わたしが響かせた、あのシャッターのメロディを…
ひでちゃんの友情と優しさに感謝です。カメラもきっと喜んでるね。本当にありがとう・・・m(__)m
EOS Kiss 60000回のシャッターの中のほんの一部だけれど、思い出画像を並べてみました。
早春編
セツブンソウ

ハナネコノメ


スミレ逍遥
ヒナスミレ



タチツボスミレ


エイザンスミレ

マルバスミレ

アカフタチツボスミレ

フモトスミレ

ホトケノザ

ヒトリシズカ

ユキワリソウ(ミスミソウ)

フデリンドウ

ウメ

イワウチワ

初夏編
新緑の森

苔のしずく

チゴユリのしずく

新緑の谷

ベニシジミ

千草咲く道

夏編
ワタスゲそよぐ風立ちぬベンチ

ナツツバキ

初秋編
ゴマナのしずく

一粒の赤

錦秋編
トウカエデ色付く

楓の光

セイタカアワダチソウ咲く谷津田

コスモスの花影

ひと葉の彩り

晩秋編
尾瀬沼の桟橋(風待ち桟橋)

秋映えの湖面(尾瀬沼の朝)

散り残る葉

山茶花の垣根

一片の落ち葉

コナラもゆる青空

落葉のベンチ

冬編
週末の森へ

冬鳥の季節(ヤマガラ)

カルガモ

シラサギ

モズ

セピア色の季節

冬枯れの里道

雪景色

初雪の朝

雪の上の忘れ物




雪のベンチ(北風がいた風景)

春を待つ空

東風吹かば 思い起こせよ

春夏秋冬いつも傍らにいた…わたしのEOS Kiss ありがとう、本当にありがとう、ね…
五年で六万枚になるわけですね。
その位が普及品の一眼レフカメラのシャッター機構の限界みたいです。
sizukuさん、この次の機種はプロ用の機種を狙ってみては?
プロ用になるとその4〜5倍は長持ちするそうです。
本体価格も4〜5倍になりますが・・・
この話納得できますねー。一緒に撮影に出かけ、撮る姿を見てますから。私は花のアングルをあーでもない、こうでもないとやっと一枚、と枚数が違う。
でも、今拝見しても一枚一枚に思いが伝わって、良い記念の数々。素晴らしいです。しかも写真群がすぐ取り出せる整理の良さ。脱帽。
そうですね。5年で60000回は、そう考えると妥当な回数なのかもしれません。
サービスセンターの人は60000回以上と言ってました。
わたしも、月に100枚ではきかないような気がしてます^^;というか、
1日で200枚は毎回撮ってます〜(笑)
プロ仕様なんて、とんでもない^^;
下手の横好きの域ですから…(笑)
かなり使いすぎですよね。やっぱりカメラは使用年数じゃなく、使用回数なんですね。
デジタルカメラになってから、どうも、気楽にシャッターを切ってしまいます。
ジークさんのように、構図を考えながらじっくり撮る写真を心がけたいです。
被写体と心で会話を交わしながら…一枚一枚を大切にシャッターを切るって大切な事ですね。
写真整理は、難しいですね。わたしも同じです。
どこに何が入っているのか、すぐに判るように整理できるといいですよね。
シャッター60000回、いいお話を聞かせていただき、胸がいっぱいになりました。
うれしい日も悲しい日もカメラを持って山に行き、sizukuさんの心は60000回以上、シャッター音と共に感動に輝いたのですね。
自分のことのように感じてしまいました。
これからも素敵なものを見つけていきたいですね。
今年一年ありがとうございました。
良いお年をお迎えくださいね。
シャッター60000回、自分の事のように感じて読んでいただいて嬉しいです。
かぜくささんは、いつもわたしのこころを判って下さって、本当に嬉しいです。
ありがとうございました。
シャッター音と共に、60000回以上輝いた心…
なんだか、胸にジーンと染みる言葉でしたm(__)m